【販売代理店契約書1「販売代理店になりたいのですが…」】


●輸入ビジネスを手がける方なら必ずと言って良いほど「海外の会社
の日本における(独占的)販売代理店になりたい」と考えると思います。
自分のお気に入りの海外製品を日本のお客さんにも広めたい。私の製品
を愛する気持ちをもってすれば、絶対に日本でも売れる。それならば、
単発の売買ではなく、販売代理店として広告から販売先発掘から自分の
裁量でやってみたい。販売数量が増えれば自分の手取りも増えるし・・・


という感じで、何はともあれ「販売代理店になりたいんです!」と相談
に来られる方が少なくありません。もちろん、製品に対する思い入れや
熱意はビジネスが成功する基本的かつ重要な要素です。「何となくこれが
売りたいんですが・・・」では長続きしないでしょう。しかし、熱意だけ
ではビジネスが上手く行かないことも事実です。


●ビジネスモデルとしての販売代理店契約(distributorship agreement)
に、どのような権利と義務があり、どのようなリスクがあるかを正確に
理解する必要があります。できれば、単純な売買契約(sales agreement)
や営業代理契約(sales agency agreement)とのメリット・デメリットの
比較をされることをお勧めします。


例えば、一般的な販売代理店契約では、販売代理店は一定数量の製品
購入義務を負います。つまり、日本国内で売れようが売れまいが、毎月
製品を購入しなければならず、売れ残った場合の在庫リスクは代理店が負い
ます。製品が小さなもので保管スペースをそれほど必要としなければ問題に
ならないかもしれませんが、大きなものですと倉庫を借りる等の保管費用が
発生します。


また、製品のバージョンアップや新製品の開発が頻繁に行われるものの場合は、
旧製品の在庫は価格を大幅に下げなければ売れ残るでしょうから、在庫リスク
は大きくなります。これが、独占的(exclusive)な代理店契約となると、
日本での販売を一手に引き受けるのですから購入義務数量が多くなり、ますます
リスクが大きくなると思われます。


もちろん、製品が売れれば手取りは増えます。契約の内容にもよりますが、
日本での販売価格を自由に設定できる場合、海外からの購入価格との差額が
儲けになります。自己の才覚で販売価格を高めに設定できれば、その分儲けが
膨らむのです。


●一方、一般的な営業代理契約では、日本の代理人はあくまで営業行為のみ
代理することになります。つまり、販売先を見つけてくるのです。実際の
売買契約は、海外の会社とエンドユーザー間で締結することになります。
営業代理人は販売件数、または、金額毎に一定の手数料(commission fee)を
得るのです。一定の目標値を達成した場合にはボーナスが出るケースもあります。


つまり、営業代理人は在庫リスクを負いません。営業行為ですから初期投資も
それほど必要としません。人脈とセールストークに自信があれば、大きな利益
を上げることが可能なのです。但し、単なる営業代理人ですから、自己の
名前で製品を販売するわけでありません。自己の事業規模の拡大という
点からは制限があるでしょう。


●このように、海外から製品を輸入して日本で販売するのには、いくつかの
ビジネスモデルがあるのです。それらを比較検討して、よりリスクが小さく、
大きな利益が得られるモデルを選択しなければなりません。情熱を失っては
本末転倒ですが、自己のビジネスを冷静に見つめる判断力も必要です。


実際の販売代理店契約書の文言は次回から見ていくことにしましょう。