【完全なる合意:entire agreement】


●「英文契約書なんて恐くない!」を読まれていると、感じることが
あると思いますが、英文契約書では「そんなことまで規定するか?」
という条文をしばしば見かけます。法体系が異なると契約に関する概念
も異なるため、日本法・日本の実務では不要と思われたり、概念が無い
ような文言が出てくるのです。


今回の「完全なる合意」も、そのような条文の一つです。端的には、
「契約書が絶対的な効力を有する」ことを宣言しています。国際
ビジネスでは、国内ビジネスに比較して、契約締結までに時間を要し
ます。その場合、交渉段階毎に覚書や確認書のような書面を作成する
ことが多々あります。そのような書面はMemorandum of Understanding
とかLetter of Intentと呼ばれます(その他色々な呼び方があるようです)。
交渉の途中と最後では、条件が変わることもあるわけですから、
「完全なる合意」を宣言して、途中で合意された条件等を排除するので
す。


●日本語の契約ではそこまで言及するものはあまり見かけません。日本語
の契約でこの文言が出てくる時は、オリジナルが英文契約書だったりして
、その影響を受けているものです。修正契約等では、前後の契約関係を
説明する文言を入れたりはしますが。とはいっても、英米法上は重要な
概念ですので、英文契約書では必須です。


●契約書中では以下のように使われます。


This Agreement constitutes the entire agreement between the parties
 regarding the subject hereof and supersedes all prior or contemporaneous
 agreements, understandings, and communication, whether written or oral.


これを翻訳すると以下のようになります。


「本契約は、本契約の内容に関する両当事者の完全なる合意を構成し、
書面であると口頭であるとを問わず、本契約締結以前に両当事者に
よって為された全ての合意、理解、協議内容に優先する」