【good faith:誠実】


●私はメルマガでは、何度も、文言の客観性が大事だとか、色々なケース
を想定して具体的な条文を作る必要がある、といった主旨のことを書い
てきました。しかし、この世の中、何でも自分の思い通りに決められる
ものではありません。杓子定規に決めようとすると、お互いが一歩も
引かず、交渉が決裂することもあります(皆さんも「これだけは譲れない
」ってものがありますよね?)。


相手との関係を悪化させても自己の主張を貫くか、多少の妥協を許容して
ビジネスを成立させるかは、経営判断であり、ビジネスセンスが問われる
所です。そして契約交渉人に期待されるのは、この点を有利に、しかも、
しこりを残すことなくまとめあげることです。


●契約実務において、こういった場合の常套手段が、「××の点に関し
ては別途、誠実な協議の上定める」という文言です。合意がすぐに得ら
れない事項については解決策を先送りにし、契約締結を優先させるのです。
先送りと言うとマイナスのイメージがありますが、プロジェクトの進行
が遅れるデメリットと比較して、検討する価値はあります。


ここで使っている「誠実な」という言葉は、努力目標的な意味しかありま
せん。国内契約ではかろうじて、民法第1条の信義誠実原則を参照する
形で当事者を拘束させることも可能です。しかし、国際契約では、実質
的な拘束力を有しないと言われています。


●契約書中では以下のように使われます。


X and Y shall on all occasions endeavor to consult in good faith
 so as to resolve matters not determined by this Agreement 


これを翻訳すると以下のようになります。


「本契約に定めのない事項については、都度、XYで誠実な協議の上解決
するように努めるものとする」