【reasonable:合理的な】


●契約書を扱う仕事をしていてつくづく感じることは、言葉の定義とは
何て不確かなものだろうということです。人文学・社会学系の学問に
おいて顕著なことですが、概念や用語の定義が必ずしも統一されておらず、
論じる者の主義主張によって勝手に定義されてしまうのです。数学の
ように世界中どの国でも答えは同じというものではありません。


契約書に書かれている文言の解釈においても同様の事態が生じることが
あります。本来は、当事者の契約関係を文字で表す以上、あらゆる事態
を想定し、使われる言葉の定義を統一した上で、契約書を作成すべきです。


●しかし、実務ではそんなことをやっている余裕はありません。年間
数百件の契約書を処理する法務の人間は、言葉の定義を明らかにすべき
部分とそうでない部分を判断する能力がなければ業務の波に溺れてしま
い、良い仕事はできません。メリハリが必要なのです。時間と人材に
余裕のある会社であれば別ですが・・・。


言い訳がましいことを書きましたが、言葉の定義で契約交渉がもつれた時
の常套手段がreasonableです。appropriateやadequateなども同趣旨で使
います。もちろん、契約の内容として決定的に重要な部分にこのような
言葉を使うのはナンセンスです。製品納期や代金支払日の記載が「合理的な
期日」になっていたら、「いつ払えばいいんじゃ!」と突っ込まれますよね。


●契約書では以下の通りに記載されます。


Licensor will provide appropriate assistance to Licensee within a 
reasonable period of time after Licensee adequately describes a
 Licensed Program problem to Licensor.

これを翻訳すると以下のようになります。


「ライセンシーがライセンスプログラムに関する問題をライセンサーに
対して適切な形で記述した後、合理的な期間内に、ライセンサーは
ライセンシーに対して適切な支援を行う」