【ライセンス保守契約書2「保守作業を定義しましょう」】


●早速ライセンス保守契約を見ていきましょう。契約書の表題は
ソフトウェアの保守であれば、"SOFTWARE MAINTENANCE AGREEMENT"
となるのが一般的です。冒頭の契約当事者の記載については、これまで
に何度か例文を掲載していますので、省略します。


一点、注意しなければならないのは、保守契約においては、契約
の相手方と実際に保守作業をする者が異なるケースがあることです。
例えば、ライセンサーが保守作業を別の業者に外注するのです。これは、
契約書中に保守作業を第三者へ委託することを許諾する旨の文言
があれば、問題ありません。


ですが、何の事前の連絡も無く、作業を別の業者に委託するライセンサー
も存在します。その場合、保守作業者と保守サービスを受ける者との
間には直接の契約関係がありません。トラブルが発生しなければ良いの
ですが、不具合が発生した場合に、せっかく締結した契約に相手が拘束
されないということもあり得ます。契約を締結する際には契約当事者と
実際の保守作業者が同一か確認すべきです。


●それでは、いきなり保守契約の核心部分である保守作業の定義から
紹介します。保守作業というのは言わばサービスの提供です。
ですから、有体物のように物の性質たる仕様を定めるというよりは、
サービス提供の態様を定めることになります。


Subject to the terms and conditions of this Agreement, X will
 provide maintenance services to keep the most current release
 of the Licensed Products that X has provided to Licensee in
 good operating condition. X will provide appropriate assistance
 to Licensee within a reasonable period of time after Licensee
 adequately describes a Licensed Products and/or Documentation
 problem to X.


「本契約の条項に定めるところによりXは、Xがライセンシーに対して
提供したライセンス対象物の最新版を良好な動作条件の下に保つための
保守サービスを提供する。ライセンシーがライセンス対象物または
ドキュメンテーションに関する問題をXに対して適切な形で記述した後
適切な期間内に、Xはライセンシーに対して適切な支援を行う」


●サービスという観点からは、サービスがいつ、どのような形で提供
されるかということが重要です。

                  
X will provide telephone and/or e-mail assistance to Licensee
 between the hours of 9:00 A.M. to 5:00 P.M., Monday through
 Friday (excluding recognized holidays).


「Xは月曜日から金曜日(祝日を除く)の午前9時から午後5時の間、
ライセンシーに対して電話または電子メールによる支援を行う」 
                 

保守サービスの時間帯を設定するに際して、外国企業が相手の場合、時間が
どちらの国の時間を指しているか明確にする必要があるでしょう。相手の国
の昼間の時間帯が日本の昼間であるとは限りません。


●加えて、以下のような文言が付けられることもあります。


X will provide appropriate assistance at X's expense where its
 analysis indicates that the reported problem is caused by defects
 in an unaltered most current version of the Licensed Products
 and/or Documentation that X has provided to Licensee.


「Xは、報告された問題がXがライセンシーに対して提供したライセンス
対象物またはドキュメンテーションの最新の改変されていない版の欠陥に
よって生じていると判断したときは、Xの費用で適切な支援を提供する」